溜井小学校(土佐町)  ぬるい
  田井村立溜井小学校から合併で土佐町立に改称後1956(昭和31)年に松ヶ丘小学校に統合
    

 溜井小学校の記録は土佐町町史に見落とすほど一瞬の記載があるだけで詳細は不明のままであった。これは土佐町発足とほぼ同時に新設統合され廃校となった上に、統合先の松ヶ丘小学校もわずか14年でその歴史を終えているなど資料的な面での情報収集が難しかったからである。ただし溜井という地名は今でも残っているし、周辺には今でも比較的住民が残っているので現地に出向けばわかりそうかなと思っていた。偶然知人がこの地区の出身者でしかも実家周辺が昔小学校だったらしいという話をしてくれ、訪問してみた次第である。知人の実家も以前に別の用事で訪れた事があり、顔見知りなので実に簡単に場所が判明した。

 写真真ん中(やや左に青い軽トラがある)が学校跡

 現在の学校跡

 訪問は2011(平成23)年3月、国道439号線を田井から森に向かいちょうど田井の町並みを抜けた先を左折して町道に入る。何度か訪れたことがあるのでどんどん先に進み、やがて見晴らしの良い知人の実家に着き声をかけた。当初の予想では実家の上に農協支所跡があるので今までの訪問例からもそこが溜井小学校跡だと予想していたのだが、実際にはその一段下にある私有地が学校跡であった。持ち主は当然知人の実家で、私有地に至るまでの詳しい経緯は不明だがこの場所に小学校があったことだけは知っているという(既に上の世代の方は他界されており、現在の当主も松ヶ丘小学校にしか通っていない)。
 「記念碑らしい物が一段上にある」というので石垣をよじ登り見てみると、【學校イテン改築 特別寄附記念】(イテンは旧書体 イ=のぎへんにカタカナで上からヨメ テンは車へんに専)とあり、校舎改築移転があった際の寄付記念碑だとわかった。旧書体を使用していることから戦前の物だと思われるが日付の記載はなく、詳細は不明であった。あくまで推測になるが溜井小学校の歴史は相当古く、明治時代の尋常小学校まで遡る可能性が強いのではないかと思われる。近所の80代の老人にも話を伺ったがその老人の親も祖父の世代も溜井小学校(初等学校や尋常小学校と名前は違うが)に通っていたと言うのでこの推測は間違いないようである。
 谷を隔ててあった伊勢川小学校と統合されて松ヶ丘小学校が新設されたのは1956(S31)年、前年に町村合併で田井村立から土佐町立に改称されたばかりであった。かなり老巧化が進んでいたらしく町村合併の条件の一つに学校の新築があったらしい。統合先の松ヶ丘小学校も過疎化と道路事情の急速な改善で短い歴史を終えたのは前述の通りである。

 特別寄附記念碑